時計の学校に通っています。

2019-06-21

4月から時計の学校に通っています。

学校といっても専門学校生のように全日過程で週5で通うわけではなく、また、時計の学校に就職するためでもなく、社会人向けに開校されている講座で、平日の夜に週2回ほどす。期間も来年3月初旬までの1年間の講座です。

前職の仕事の都合でドイツに住んでいるときに、ふと、機械式時計のオーバーホールを学んでみたいとか、なんならオリジナルの時計を製作してみたいなどと漠然と考えていて、ネットで探して見つけたのでした。

HPの受講者向けの紹介文には「機械式時計のオーバーホールを中心にクォーツ式時計の修理や電池交換、脱進機やヒゲゼンマイの調整等の修理技術の基礎を学ぶ」とだけ書かれていて。

実際にどこまでできるようになるんだ?とも思いつつ、まぁ、とりあえずやってみるか!と、金にモノを言わせて申し込んだ次第です(笑)

これまでの講義内容と時計の駆動方式を軽く紹介

講座は毎回19〜21時の2時間のクラスで、トータルで72回の授業があるんですけど、これまでの授業の内容はおおむねこんな感じです。

  • 4月・・・手巻き式時計のムーブメントの部分的な分解と組み立て(洗浄や注油作業は割愛)
  • 5月・・・工具製作(時計の修理で使用する工具を自分で削り出して熱処理して整形)
  • 6月・・・手巻き式時計のムーブメント分解、洗浄、注油、組み立て、ケーシング

手巻き?なにそれ? え?ムーブメント?ですよね。普通は。

時計は大きく2つに大別できて、「機械式」と「クォーツ」に分類されます。機械式は歯車で駆動するもので、クォーツは基本的にはボタン電池で駆動するものです。最近では「スマートウォッチ」なんてのもありますね。

これらの時計としての駆動を司る本体部分を「ムーブメント」と呼びます。

一般的には馴染みのない機械式には「手巻き」と「自動巻き」の2種類があって、現代においては「自動巻き」の商品が多いようです。おそらく「機械式の良さを存分の堪能しつつも、限定された条件の中でクォーツのような利便性をそれなりに兼ね備えているから」だと思われます。

とはいえ、機械式時計を選択する時点でそもそもある程度のオタクですので、そのあたりの選び方はもはや好みのレベルと言えるでしょう。

ただ、この沼に浸かりすぎると「手巻き」にも手を出す傾向があるような印象があります。

学校の実習教材としての手巻き式のムーブメントがこちらです。

この写真自体は、今年度のコースの申し込み前に開講されていた昨年末の体験講座での「分解・組立」イベントで行った時の実際の写真です。

写真手前側が文字盤の反対側で、こちらに取り付けられている部品をおおむね分解した時の写真です。この時は「思っていたよりも部品点数は少ないな」と印象を持ったのを記憶しています。

この時計の講座、どのくらい人気あるの?

時計の分類の話から学校の話題に戻します。

1年間を通して機械式時計やクォーツ時計のオーバーホール技術を学ぶクラスで、当初はどのくらい需要があるのだろう?と思っていました。が、、

実際にはなかなかの人気講座でした。

毎年、年始に募集が始まり3月中旬くらいまで募集をしているものの、1クラス限定で座席数に限りがあり(最大24名くらい)、私は1月の募集開始時に即座に申し込みましたが、終盤に申し込みを行った人はキャンセル待ち3番目で運良く滑り込めたなどと言っていたので、比較的人気のある講座と言っていいと思います。

今年の受講生は24名中6名が継続受講者で2年目の人が3名で3年目が1名だっけかな。そしてなんと6年目が2名(!?)もいらっしゃいます。どうやら継続して受講する人が絶えないようです。

仕事との兼ね合いで参加できない座学・実技があるだろうし、新たな発見もあるだろうから2年目、3年目の人らは比較的理解できますが、6年目はもはや道楽の域を超えてるのでは??と初回授業の自己紹介の時間でついつい思ってしまった次第です。

でもね、確かに終わりはないですよ、この手のジャンル。求道者。実際に6年目の自営業の方はご自身のお店の商品に時計を取り扱うことになったとか。

実際の風景

「文章はいらないから写真はよ」という声にそろそろお応えしますね。

今月6月は、事前に購入した手巻き式時計の分解・洗浄・注油・組み立て実習を行っていまして、これの時計を紹介させてください。

スイスのETA社のムーブメントで「キャリバーETA6497」です。ETAと書いて「エタ」と読みます。

先の体験講座のムーブメントと同じものを購入し、これで学んでいます。

なお、キャリバーとはムーブメントの識別名のようなもので、パソコンでいうとOSがムーブメントを示し、キャリバーは「Windows10」やら「Windows8」など、バージョンや仕様の違いなどを指します。多分そんなイメージであっていると思う。

洗浄と注油をして再度組み上げた完成状態の写真

先の丸裸の状態が、最終的にはこんな姿になります。

洗浄工程

新品のムーブメントなので、そもそも汚れているわけがないのですが、実技講習上、ベンジンを用いて油や汚れをハケで落とします。ベンジンにドブ漬けです(透明なのでわかりにくいですが容器の中にはベンジンが入っています)。

次の写真に注目ください。ピンセットに対してこれほど小さな部品も当然あります。これに後ほど専用工具を用いて注油をしていくのですが、下の写真の部品なんて注油に必要な油の量は直径で0.5mmもなかったような印象です(笑)。あまりに微量なので量で表現できません。時計の修理には「キズミ」と呼ばれる時計用ルーペを用いて分解組立のほか、注油作業を行っていくことになります。

そしてピンセットの上にある赤い棒状のような工具は「オイラー」と呼ばれるものでして、これはなんのための工具かというと「油さし」です。これ、先端がスプーンというか平べったい形状をしていて、ここに超微量のオイルを取り出し、注油箇所に油を塗布していくものなんです。部品も小さいけど工具もとにかく小さい。キズミなしでは何もできません(笑)

組立(アッセンブリ)工程

手の汚れや皮脂がムーブメントにつかないよう、利き手と反対の親指、人差し指、中指にゴム製の指サックをハメて、右手のピンセットで慎重に組み上げていきます。

どの部品がどこに組みつくのか未だよくわかっていませんが、部品置きプレート(下の写真の水色のプレート)を用いて分解順番をわかるようにしていたのでなんとかできました。

講師の丁寧な解説とサポートのおかげで順調に組み上がっていきます。

社会人講座の良い点と余談

社会人講座のいいところは、講師も社会人だしこちらもそうだし、ということで程よい距離感で接することができます。厳しく学ぶというよりは、個々人の仕事や家庭の環境を考慮しながら楽しく無理のない範囲で学ぶという感じでしょうか。

余談ですが、講師の解説は丁寧です。板書で構造を断面図で図解もしてくれています。ただ、質問しない人がほとんどですね。中にはメモすら取らない人もいます。メモを取ろうが取るまいが個人の自由なのでOKなのですが、ちょっともったいないかなとも感じます。

私は性格的にもそうなのでしょうけど、後で自分一人で再現できるように聞き漏らさずメモを取ってます(最近は撮影もして後で振り返れるようにしてます)。また、よくわからないところはわかるまで質問しています。

今年度しか受講するつもりがないし、この講座を通してオーソドックスな機械式時計のオーバーホール技術を習得していくための基礎の土台としたいのでこちとら必死です。

「時間針の取り付けは時計回りで必ず止めてください。時計は時計回りに動きますよね?時間針(短針)を微調整で反時計回りで12時の位置に時間止めると、分針(長針)を取り付けた際に歯車と歯車のバックラッシの分だけどうしても短針と長針が微妙にズレてしまうんです。」

私は前職の仕事による知識と経験で「あぁ、なるほどね」と、理解できますけど、口頭でこの説明を受けてスッと入っていくのなら問題ないけど、せめて「すみません。バックラッシとはなんですか?」の質問があってもいいような。

せっかく安くないお金を払っているので、もっと皆たくさん質問しちゃえばいいのになーと個人的には思いますが、前述した通り、楽しみ方は人それぞれですもんね。

5月の工具製作

上から透明なアクリル製の押さえ棒、真鍮製の探り棒と呼ばれる工具。それと精密ドライバーの先端幅1.6mmのマイナスドライバー。

これらは5月の授業の中で、自分で手加工にて製作したものです。

アクリルと真鍮のものは先端がマイナスドライバ状のものとアイスピック状のものに整形しています。いずれも時計の修理の際に必要とされる道具たちです。実際に6月の分解・組立の際に活躍しました。

これらの工具たちは鉄工ヤスリで荒く形状を作り、インディア砥石なるもので細かく追い込み、紙ヤスリで形を整え、最後にピカールのような研磨剤でピカピカに鏡面加工を施しています。

精密ドライバに至っては、熱処理の焼き入れ焼き戻しも自分たちで実施しています。

ガスバーナーで焼き入れ処理をして水冷冷却。その後にアルコールランプで焼き戻しを行いました。焼き戻し温度は300℃程度(母材が濃青〜淡青色となる程度)で処理しています。

前職の部品設計で散々熱処理指示を図面で表記していましたが、自分で熱処理をしたのは初めてだったのでとても新鮮な感覚でしたね。

今回製作したようなものはわざわざ自作せずとも基本的な時計にまつわる工具ですので、市場でもちろん買えますが、これが特殊でしかも自分たちの都合の良い工具となると、入手性は極めて困難となるので、時計技師の方々は自身で既存品を改造したり、オリジナルで製作して対応しているようです。

教材のムーブメント紹介

先ほども紹介しましたが、スイスのETA社のムーブメント「キャリバーETA6497」を用いて実技講習を実施しています。

「元々は懐中時計に使われているものですよー」と説明を受けていたので、「あ、そうなんだ。ふーん。」と特に調べずにいました。

で、今回のこのエントリーを書くにあたって、ググってみるとなんと、、、

ちょっと前の「デカ厚ブーム」の火付け役でもある、あのイタリアの超有名・高級ブランドPANERAI(パネライ)でも用いられているムーブではないですか!!!

画像参照元HP: http://www.threec.jp/magazine/73

確かに全く同じ形状の部品構成。裏側はさすがにETAのベースのままではなく、美しく仕上げていますね。シースルーバック萌え。

なお、文字盤側はこんな感じの時計です。見たことありますか?ありますよね!!ロレックスやオメガではなく、あえてパネライを着ける人多いですよ!取引先の営業さんの腕元に注目してみてください。時折パネライユーザーいますので。

画像参照元HP: https://www.rasin.co.jp/blog/panerai/ウォッチコーディネーター実技講習とパネライpam00000/

こちらのサイトがこのムーブメントの歴史に触れていて、楽しく読めたので紹介しておきます。

今後の授業内容

今週はオリジナルの文字盤の装着、時針・分針・秒針の圧入取り付け、外装ケースへの装着が予定されています。

ムーブメントの分解・洗浄・注油・組立に調整だけかと思いきや、時計として完成させてくれるとは思ってなかったので、ケースに仮付した時はちょっと感動しました。

これはもしやマコライの完成か!?

これ、来年の全講義が終わった後に、パネライにインスパイアされたデザインでケースを削り出しで製作してしまえば、「手巻き式マコライ」の完成ということなのでしょうか?。天才では!?(ちょまw)

ムーブメントを作らずして、オリジナル時計と言うのも微妙な気もしなくはないですが、そもそも多くの時計メーカーは汎用ムーブメントのETA社のキャリバーを使用しているのだから、おかしな話でもないですよね。

メタルバンドを夏場はメッシュ仕様に変えるだけでも印象はガラッと変わりますし、何しろこうやってちょっとずつ自作ポイントを作っていき、自分オリジナルの時計にする構想を練るのがとても贅沢で楽しい時間だったりします^^

今後もちょくちょく時計の学校で学んだことを紹介していきますね。

ではでは。